フローランス・ミアイユ (上映作品)あらすじ Florence MIAILHE |
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「シエラザード」 | (アラビアンナイト 序話・第千夜一夜より) |
1995年 35mm、 16分 | |
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1996年 アニメーション大賞金賞(フランス)/アニメーション・フィルム |
一等賞受賞(エジプト)/フィスティバル・ド・ファムでパブリック賞受賞 | |
ブリュッセル、 アネシー、 ニューヨーク、 モントリオール、 ロンドン | |
のフィルム・フェスティバル等で上映。 | |
←「指輪を集める情婦」の原画/紙にパステル | |
◆ 今は昔、ササン朝ペルシャにシャーリャルという名の勇猛な大王がいた。弟の名はシャー・ザマン。こちらはサマルカンドの王として封じられていた。 二人はそれぞれの国を統治し、長くあいまみえることがなかったが、あるとき兄王のたっての希望で弟王は兄の国を訪ねることとなった。 シャー・ザマンは準備万端整えて従者たちと出発したが、兄に贈る大切な贈り物を忘れたことに気づいて一人王宮に引き返してみると、最愛の妃がこともあろうに黒人奴隷と戯れているではないか。シャー・ザマン王はその場で二人を斬り殺し、誰にも告げずに兄の都へ旅立った。 兄王は盛大な宴を催し歓待してくれたが、弟王は故国の不祥事を思うと心が晴れない。眠れぬ夜が続き病人かと疑われるほどに憔悴してしまう。 兄王が誘ってくれた狩猟にも同行せず王宮で留守居しているうちに、ある日思いがけず窓から兄の妃の不義を目撃する。この王妃もまた黒人奴隷を相手に目を疑うほどにあさましい肉の戯れにうつつをぬかしていた。 ーーあれほど立派な兄さんでも妻に裏切られるものなのか。おれだけが例外ではなかったー そう思えばいくらか気分も休まる。 狩から帰った兄王は弟の顔色が和んでいるのを見て、その理由を尋ねた。 話ししぶっていた弟もなんどか兄にせがまれて真相を語る。 「まさか・・・・。」 「本当ですよ。」 一計を案じ、二人は旅に出たふりをしてひそかに王宮に戻った。窓から見張っていると、果たせるかな兄の妃は他の妾卑らとともにまたも淫靡な遊びに耽っている。 兄王はこの世の何を信じていいかわからず、弟王とともに諸国を巡る旅に出た。旅の途中で二人は魔神とその情婦にめぐりあうが、この女も魔神の眠りの隙を見て、二人に誘いかける。話を聞けば、これまでに魔神の目を盗んで五百七十人の男と交わったというではないか。情事の見返りとして男からせしめた指輪が数珠つなぎになっていた。 どうやら女とは、いつでもどこでもそういうものらしい。 シャーリャル王は弟ともども急いで都へ帰り、家臣らを集め、 「この大地の上に一人として貞淑な女などいやしない。女とはこの世に生かしておく必要のない生き物なのだ。」 と宣言したうえで妻妾をはじめ後宮の女奴隷たちまでことごとく殺してしまった。 ◆ こののちシャーリャル王は夜ごとに処女を求めて夜伽をさせ、朝が明けると殺すようになった。ついには町中に処女がいなくなり、大臣は困り果ててしまった。それを知った大臣の娘シエラザード(シャーラザッド:シャハラザード)は自ら夜伽の役に立候補する。 父の大反対を押し切り、シエラザードは王の寝所に赴く。 夜伽を終えると、かねてからの手筈どおりに妹のドゥンヤーザード(ドゥンニャザッド)が入ってきて、枕辺にひざまづいて言った。 「お姉さま、お願いでございます。王様のために面白いお話を語ってくださいませ。眠れぬ夜も短うなりましょうほどに。」 折りしも不眠に悩まされていた王はすぐに許しを与えた。 シャーリャル王はその話のあまりの面白さに誘われてシエラザードを殺すことができず、とうとう物語は千と一夜も続いた。 ◆ 物語がすっかり終わったその朝、シエラザードは言った。 「王様、私のたっての願いをお聞きくださいませ。」 「おお、何でも申してみよ。」 すると、寝所に三人の男の子が入ってきた。 「ここにおりますのは、王様と私の間に生まれた子供達です。もとより私の命は王様の御心のままです。けれど、この子らを母無し子にしたくはありません。どうぞ子供たちへの施し物として私の命をお与えくださいませ。」 感極まった王は 「シエラザードよ、おまえを殺す気などとうの昔になくなっていたのだ。おまえは美しくて賢くて、実に貞淑である。世の中にこのような女もいるとは・・・。私は過去に随分と酷いことをしてきたが、今では本当に後悔している。」 王はシエラザードを王妃として迎え、三人の王子とともに楽しく幸せに暮らした。 そして以前にも増して恵み深い王として君臨するようになった。 |
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阿刀田高著「アラビアンナイトをたのしむために」をもとに加筆・修正。 参考: 「アラビアンナイト」 平凡社/「完訳千一夜物語」 岩波書店 |
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