到津伸子 展 -NOCTURNE- -神経に響くブルーのシンフォニー
開催期間:2004年04月01日~ 2004年04月28日開催場所:アートスペース・サンカイビ
光、影、往き交う男女・・・、様々なエレメントが混ざり合い、その街を包む空気を創りあげている。そして、空気というのは時として色彩を帯びた音楽のようでもある。
到津伸子の絵筆が感応して生み出されたブルーは、Blue note-青い音符に変化し、東京という街が奏でるノクターンを目の前に出現させてくれる。
パリと東京を拠点に国際的に活躍する一方、作家としても昨年 「講談社エッセイ賞」 を受賞し、多方面で才能を開花させている画家、到津伸子による展覧会を開催致します。
今回は、油彩約30点と水彩数点を展示いたします。この機会に是非ご高覧頂きますようお願い申し上げます。
◆ イトウズの油絵やエッチングの人物は、息と乳の霧で描かれてあるとしか言いようがない。
(中上健次/ 「アルファ・キュービック・ギャラリー展カタログテキストより)
◆ 人間は、存在しているだけでは人間のままである。けれど、才能のある指がペンや楽器や絵筆を用いて犯していくと、人間は風や光や熱や水や、あるいは果実などに変化する。そして、それは感情を携えるから、ただの風や光ではなくなるのである。悲しい水や発情した果実などのように、それは動きまわり、お喋りをし、俗悪で、魅力的で、私たちを幸福な地獄につき落とす。
その地獄を人々に分け与えることが出来るのは特権を持った限られた小数の人間だけである。たとえば、到津伸子という画家のように。
(山田詠美/渋谷西武個展カタログテキストより)
§
パリで感じるのは覚めたナイトブルー、あるいは夏の夕方の青ざめたブルー。
東京のブルーは太平洋の光を受けて、淡くて優しい。ヨコヤマや湾岸地域の軽やかなブルーライト、高層ホテルのスカイラウンジから望む夜景の上に広がる。藍色。そして、
太平洋の向う側、カリフォルニアのブルー、遠い地中海のブルー・・・。 ブルーの混交。青い絵ではない。ブルーの光を受けた顔。 青い影の中の彼女と彼。そして、風景でもあるネオンの文字。東京やパリの街かどですれ違う少年や少女たち。出会いそうで出会わない。渋谷の街かどで。モンパルナスの路上で。世界中の似たような街で。
He lives in this town, and she also…. (彼はこの街に住む。そして、彼女もまた・・・)
青い絵ではない。ブルーの光を受けた顔。青い影の中の彼女と彼・・・。
とはいっても、絵は化学反応のようでもあり、絵の具という物質の夢でもある。
(文/到津 伸子)