時田良太朗展 内に秘めた美
開催期間:2007年10月13日~ 2007年10月23日開催場所:ギャラリーサンカイビ
時田良太朗は第二次世界大戦後、農学を学び、理科教師となった。画家に転進した後も、その根は静かに息づいていたのであろう。彼は今、人里離れたアパラチア山脈の麓にひとりで暮らし、この地の雄大で厳しい自然と向き合い、人間の生の意味を思索している。彼が1990年頃から取り組み始めた「生シリーズ」は、生命発生の起源であると言われる有機体の小球、コアセルベートがモチーフとなっている。近年このシリーズは、球形の輪郭が地に溶け込むように曖昧になり、構成は簡潔になり、色彩は削ぎ落とされ限りなく白へと近付いている。普遍性のある理とは、純粋に抽出されたシンプルなものだ。自然について学び、教えた時田は、今、日々静かに自然と対話し、より深く、より研ぎ澄まされた境地へ向かっている。 今回の作品展では、白を基調とした一連の「生シリーズ」を一堂に展示する。作品は鑑賞者に問いかける。鑑賞者と作品との対話は、時田と自然との対話の追体験のようなものだ。人間の受容力や感性によって、対話の深さや長さはそれぞれに変わる。ひととき喧騒を離れ、白い画面の奥からの問いかけに、耳を澄ませてみようではないか。