篠田桃紅展 ―文字と造形―
開催期間:2006年06月01日~ 2006年06月27日開催場所:アートスペース・サンカイビ
篠田桃紅展 ―文字と造形― のご案内
日本を代表する世界的な抽象作家、篠田桃紅という人の魅力に迫るためには、まず彼女の人生について語る必要があるだろう。1913年、旧満州国大連で生れた桃紅は、母親の胎内にいるときから中国大陸の雄大さと国境に縛られない自由な風土を学びとっていたに違いない。それは子供のときから決まりきったことを嫌い「学ぶことは真似ること」という当時の教育に真っ向から反発し、自由にものを見て、発想する力を養った。それはまた特定の師を持たず、独学の道を歩んできたことからもうかがえる。
24歳の初個展に出品した自作の歌と古歌は、ある書道新聞に酷評された。桃紅はこのことに孤独感を覚えるが、むしろそれを「秘すれば花」とポジティブに受けとめることにより、自己の感性をより端々しい方向へと向けていった。
そんな桃紅のほとばしる才を世界が放っておくはずがない。戦後、欧米の評論家や画家が新しいアートムーブメントとして、日本の書を取り上げた。1955年にはピエール・アレシンスキーが初来日し、桃紅を含む新進気鋭の書家を取材し、「日本の書家」というドキュメンタリー・フィルムを発表した。当時、即興的な感性で表現する書はまさに欧米人にとって驚きであり、アクション・ペインティングの走りとなったのである。もちろん、桃紅はアメリカの地で作品を発表するチャンスを得て、1956年初渡米する。「時の人」となった桃紅のその後の活躍には目を見張る。今年93歳になる桃紅だが、疲れを知らず年々パワーを増してゆく。本当に脱帽する。
桃紅にとって、文字も抽象画もまったく垣根がない。「表現」でありさえすればいい。作品の中に書かれた文字のような形について訊ねても、「お好きなように受けとめて下さい。」と返ってくる。作品のタイトルにも興味がない。 桃紅にとって、一番大切なことは、決まった形や色に安住することなく、常に「揺らぐいま」に心を留め、表現することなのである。
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今回は、近作を含め「文字から造形」まで紅桃のオリジナル作品約15点を総合的に展示いたします。是非、この機会にご高覧頂けますようご案内申し上げます。