篠田桃紅作品展 2009 桃紅水墨 ― 文字という かたち ―
開催期間:2009年06月25日~ 2009年07月30日開催場所:ギャラリーサンカイビ
世界的に活躍する美術家、篠田桃紅にとって墨とは、制作の道具以上の存在である。存在のもとは、さびしく幽かなもの。老子はそれを「玄」といい、人生と宇宙の根源で、それは真黒ではなく、幽かに明るい「くろ」と云った。
「ほんとうの”くろ”(玄)は真っ黒ではない、という考え方が、私にはたいそう気に入る。一歩手前でやめる、という、そのあと一歩に無限のはたらきを残し、それはわが手のなすところではなく、天地自然、神、宇宙、とにかく人間のはかり知れない大きな手にゆだねる、そういう考え方がこのましい。このましいが、一歩手前がまことにむつかしい。」と桃紅は語る。
桃紅の墨象作家と云われる由縁は、既存の書の枠を超え、墨を使って独自の抽象スタイルを確立したところに起因しているが、純粋にかたちを追うとこに主眼をおいた抽象の世界に留まらず、書と抽象の世界を跨ぎ制作を続けてきた。それは桃紅の書を含んだ日本の古典美に対する深い造詣と切り離すことはできない。
桃紅は「文字」について以下のように記している。「古い中国の、骨や甲羅に彫られた、まだ文字ともいえないキズみたいなものにこころ惹かれ、それは古代人のはじめてかたちをつくろうとした激しい精神、おおげさにいえば魂の叫び声がして、後代の練達した名筆から受けるのとは別の、シンを揺さぶられるような感じをうけた。そして今も、あたらしいかたちをつくることの、混とんとした魅力が私をとらえる。」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
今展は、桃紅の創作の原点ともいえる書作品「文字」をテーマにした展覧会です。百人一首や万葉集などの古典や文字など約12点展示致します。文字の発祥や日本語の由来などに想いを馳せて、さまざまな表情をみせる桃紅の文字の魅力に迫ります。また、日本古来の「表具の美」についてもお楽しみ頂ければ幸いです。