お別れ
3月1日早朝、篠田桃紅先生は旅立たれました(享年107歳)。桃のお節句の3月のお生まれからお父様が桃に紅で「桃紅」という雅号をおつけになりました。「桃紅」は中国の禅林句集に由来します。桃は紅、季は白、薔薇は紫、それはどうしてなんでしょう?と春風に聞いてみても 知らないと言う。禅者があるべき無心の境地を、個性のままに美しく咲く花になぞらえた言葉です。
©︎高円宮妃久子 Courtesy of Princess Takamado
巷では桃の花が満開です。花屋さんの軒先でも桃の花が「桃のお節句」を迎え綺麗に咲き誇っています。今年の春一番は統計を取り始めた1951年以降、最も早い記録だそうです。縮こまった心身が少しリラックスする春の兆しを感じる桃の季節に旅立つなんて粋ですね。一貫して最後までご自身の花を咲かせて旅立たれたのですね。
心よりご冥福をお祈り申し上げます。
篠田桃紅 TOKO SHINODA
(1913ー2021)
中国・大連生まれ。5歳の頃から父の手ほどきで書を始める。戦後、文字を解体し、墨象を始める。1956年単身渡米、ニューヨークを拠点にボストン、シカゴ、パリで個展を開催し、欧米のアートシーンを牽引する。以後、世界と日本で高い評価を受け続けていた。大作としては増上寺大本堂襖絵がある。