「風」 書×篠田桃紅
「風」という字を、書として私はときどき書くが、そういう時、どういう「風」を心において書いているのであろうか、 ただ「風」という記号のかたちを書いているだけなのか、「風」なるものに、何程かの認識を持って書いているのか、 あらためて考えてみたが、よくわからない。 「風」は気象庁の意味のほかに、人間の暮しの中の言葉に、実にさまざまに使われているので、 私の頭の中にもさまざまの風が吹いていて、おそらく私は、その日の風まかせ、したがってそれは筆まかせ、 の気味なのである。 篠田桃紅著「おもいのほかの」より抜粋]]>