うつろいー墨・いろ・かたち
墨による表現の新たなる可能性を切り拓き、世界を舞台に活躍する106歳の美術家、篠田桃紅氏の個展を開催いたします。1913年旧満州・大連生まれ。幼少より書をはじめ、万葉集や百人一首などの和歌や能といった日本の古典に親しみ、20代で書家として活躍します。1956年に渡米し、当時ジャクソン・ポロックやマーク・ロスコなどの抽象表現主義が台頭するなか、篠田氏は墨象という独自のジャンルを築き、欧米のアートシーンを牽引してきました。
本展では初公開の色鮮やかな料紙に書かれた秘蔵の万葉集や百人一首の書にスポットをあて、千年の時を経ても変わらぬ日本人の四季折々の自然に対する讃歌や先人の繊細で巧緻な言語感覚を篠田桃紅がたくみに現代に蘇生させます。また、墨の濃淡や陰翳のあやに揺らぐ文字やかたち、余分なものをすべて削ぎ落とし、一瞬の心のかたちをたおやかで優美な線と面で表現した抽象作品など、新作の原画や手彩色をほどこした版画などを含め約30点を展観いたします。
大正・昭和・平成へと駆け抜けた孤高の美術家、篠田桃紅の作品とともにご高覧頂き、うつろいゆく時に心をはせて鳳鳴朝陽、新しい時代「令和」への安泰を祈りたいとおもいます。
ギャラリーサンカイビ
平田美智子
篠田桃紅作品展 うつろい–墨・いろ・かたち
2019年6月12日〜25日
新宿伊勢丹本館 6階アートギャラリー