チャペル・レオノール・フジタ
レオノール・フジタとは、フランスで一番有名な日本人の画家、藤田嗣治のことです。レオノールとは藤田のキリスト教の洗礼名で、1959年このランスでキリスト教の洗礼を受けています。 1966年、シャンパン製造会社マムの当時の社長、ルネ・ラル氏により提供された200m2にも及ぶチャペルの壁画を、藤田にとってはフレスコという新しい技法を使って短期間で仕上げていきました。 私個人としては、その内容にあまり感心しませんでした。それは藤田の80歳という晩年の作だからというわけではありません。チャペルという神聖な場所を私物化してしまう精神に対してです。 ウキペディアでチャペルを検索すると、チャペルとは、『本来クリスチャンが礼拝する場所であるが、教会の所有ではない礼拝堂を指す。』或いは、『日本語の慣行として、結婚式場など、もっぱら世俗の用途で用いられる。』とあります。このチャペル・レオノール・フジタは後者に属する部類であり、本当に藤田はキリスト教徒であったのかと疑いを持ってしまいました。 壁画の内容は撮影禁止ということなのでご紹介しませんが、聖母マリアに捧げる壮大な物語になっています。その壁画の中に藤田自らが登場したり、藤田夫人が登場したり、私には何とも理解し難い内容です。 日本の宮大工は、神社仏閣以外の仕事は一切受けず、仕事がない時は農業をするという徹底ぶりだったそうです。なぜなら神社仏閣を手がける者は常に魂を綺麗に磨かなくてはいけない、利益を上げるために計算高くなるとか、手抜きを覚えてはいけない、という理由からだそうです。 宮大工でもそれくらい清い精神を養って挑む仕事なのに、チャペルの心臓部分でもある壁画を私物化したいとおもう藤田の気持ちが理解できません。ましてや日本人である藤田がキリスト教の礼拝堂を手掛けるのであればなおさら、フランス人以上に気を使わなければいけない部分だとおもいます。 すでに他界してしまった偉大な画家を批判したくはありませんが、『晩節を汚さず』の精神でいてほしかったとおもいます。 ]]>