テレビCMを見て
浄土庭園と楼門を映したあと、CMの画面は金色に輝く美しい仏像に変わります。あの天才仏師運慶の、おそらく(というのは運慶の生年が不明なので)20代、初めて宰領して制作した大日如来像で、国宝に指定されています。金箔はだいぶ剥落していますが、なお全身を金色に包み、何よりも若々しい表情の中に青年仏師運慶の意気込みが感じられます。でも、この仏様、円成寺のご本尊ではないんです。祀られているのは、本堂ではなく境内の多宝塔の中で、参拝者はガラス越しですが、いつでも拝観できます。かつては本堂の中でお厨子に祀られていたのですが、そのお厨子があちこちに移されていたようで、同行した知人が初めて拝観したときは、本堂のいちばん隅にあったようです。すぐ隣には本堂の障子、その障子越しに淡い光を受けて、神秘的に輝いて見え、その場に立ち竦んでしまったそうです。老朽化し大正9年に移設した多宝塔を、平成2年に再建した後、ここを安住の地としたものです。 ご本尊は、平安時代後期の阿弥陀如来像。定朝様式をひきついだ優雅で端正なお像はいかにも平安貴族好み、国の重要文化財に指定されています。再度円成寺に拝観する機会がありましたら、本堂内陣の柱にも注目したいと思っています。かなり褪色はしていますが、二十五菩薩の来迎図が、十分鑑賞できるほどに残されています。 京都と奈良。京都には、仕事もふくめ、訪れることも多いのですが、奈良にはあまり行く機会がありませんでした。京都は何でもそろう大百貨店、それに対し奈良は老舗の専門店。それぞれの魅力にあふれた古都、CMを見ながらそんなことを思いました。]]>