修復について
修復からのメッセージ』から今回は修復について抜粋して、ご紹介いたします。 「復元」は、半ば失われてしまったような文化財などを元と近い状態に作り変えることであり、「修理」は、車などの故障した部分の機能を回復して壊れたものをきれいになおすことです。 そこで、「修理」と明らかに区別しなければならないことは、「修理」は「作り変え」、「きれいになおす」ことではないという点です。 車のボディに傷がついたときには、ヤスリをかけてから塗装し直せばいいわけですが、絵画に傷がついたとしたら同様に塗り直すことはできません。 車を「修理」するときには手段を選ばず結果がきれいであればいいわけですが、絵についた傷を「修復」するときにできることはその部分の処置であり、他に問題がなければそのときの状態のまま「保存」することが今日の「修復」の前提になっているのです。 近代以前のコレクションを有するルーブル美術館に展示されている作品はほとんどが修復されていると言っても過言ではないそうです。 そして私たちは画家が描いたままでなく修復された作品を見ているという事になります。 ですから”修復”を念頭におきながら作品を鑑賞してみるのも、より深く絵画を読み解くために価値がありそうです。 (※引用:森直義『修復からのメッセージ』) ]]>