小倉百人一首を読む その2
音に聞く 高師の浜の あだ波は かけじや袖の
濡れもこそすれ
祐子内親王家紀伊
噂に名高い高師の浜にいたずらに押し寄せてくる波にはかからないようにしましょう。ゆくゆく涙で袖を濡らすことのないように。
祐子内親王家紀伊は、平安中期から後期にかけての歌人で、後朱雀天皇の第三皇女祐子内親王につかえたといわれています。後拾遺和歌集などの勅撰集に三十一首が載せられています。生没年は不詳。
この歌は康和四(千百二)年に堀川院艶書合で、藤原俊忠の「人知れぬ思いありその浦風に 波のよるこそ言はまほしけれ」(人知れずあなたのことをおもっています。荒磯の浦風に波がおしよせるように、夜あなたにあってお話したい)という歌にたいする返歌として詠まれたものです。プレイボーイからの甘言をピシャリと撥ね付けた痛快な一首です。昔も今も女性は強いですよね。
この歌にある高師の浜は、大阪府高石市から堺市にかけての大阪湾に面した海岸で、かつては白砂青松の景勝地だった所です。京の都からも近いところの歌枕です。