山田浩司展 後記
善重寺が所蔵する国重要文化財、聖徳太子像の年に一度のご開帳日に合わせて、山田浩司作品展が開催されました。
同寺所蔵の聖徳太子立像は、高さ約1.3メートル程の木造で、高い技術で彫刻・彩色がされ、国内で最も美しい太子像として岡倉天心によって旧国宝に指定されたものです。
ご開帳日当日は、朝から沢山の人々が並びました。同木彫は聖徳太子16歳のお姿で、玉眼崁入、髪を美豆良に結い、袍衣に袈裟をかけ、左手に柄香炉をもち、その一指で衣の端をとり、右手に笏を持っています。鎌倉時代の後期に作られたこの太子像は、木彫の太子像の中でも逸脱した一つの傑作ではないでしょうか?
聖徳太子のお顔は、眺める角度によっていろいろな表情を見せてくれます。正面から立って眺めると凛々しさがあり、真下から見上げると観音菩薩のような優美なやさしさに変わり、本当に素晴らしい彫刻です。
ご開帳のあとは、ご本堂で藤本住職様の有難い法話と後藤道雄先生(茨城県文化財保護審議委員)の解説を聴き、改めてこの像の歴史的重要性を知ることができます。
そのあと、黒書院に移動して、山田浩司の彫刻をお楽しみ頂きました。山田浩司氏の解説を聴きながら作品を眺めていると不思議と仏教彫刻のような神々しさに変わり、展示する場所によって投影される不思議さを感じました。
鎌倉後期に作られた木彫の聖徳太子像と現代作家、山田浩司氏による立体作品、時空を超えた芸術のコラポレーションでした。