建築家 若山滋氏の講演を拝聴して
若山氏は、一つの答えを導き出すことに惹かれ「数学少年」であった少年時代から、構造力学や美術課程の学問を経て、またヨーロッパでのヒッチハイクによる体験等から哲学的・文化的な見識も醸成されてきたのであろう。設計だけでなく文章も書ける博学偉才な建築家となられたことに合点がいく。若山氏の講演から特に印象的な話の一部をご紹介したい。
①ヨーロッパは「積み上げ」で、日本は「組み立て」と説く若山氏。ヨーロッパの街並みは石を使った建築であり、石を積み上げ壁を造り、石がそのままアーチとなり、石を敷詰め並べ石畳の路面ができる。ここには石という物質的重みと古代からの時間の重みが重なっている。そこに生きてきた人間は考え方が違い、古代ギリシャの科学が過去から積み上がり、ガリレオやニュートン、そして近代科学者まで叡智の積み上げによって継承されてきた。
日本は、柱を組み立て屋根を造る。「棟上げ」と言うように屋根の建築を重視する。屋根の集合体に襖や障子で隔て、組み立てて部屋を造る。このためプライバシーは無いが、家内において和む文化がある。
②あるケニアからの留学生が「アフリカから見ると日本はwestです」と言われ衝撃を受けた覚えがある。そして中国や韓国はeastだと言うのだ。西洋・東洋と世界地図にイメージ線を引いてきたが、見る場所が変わると東西の見方が違うのである。
この後、ホワイトボードに世界地図を描き、東西といわれる境界線についての展開となる。石材建築や木材建築の建造様式からの東西分布、宗教や文字、文学による線引き、他にも椅子に座るか、靴を脱ぐか等の文化による線引き等々、世界地図に次々と線を引いていく。出席者一同、関心を持って聴き入り、そして感銘を受けた。
その他にも著書、学問、陽明学、政治、思想、日本文化等々幅広い内容の講演であった。
<謝辞>
今回の若山様ご講演時には映像機器トラブルがあり資料を投影ができないハプニングの中、ご出席頂いたお客様に大変ご迷惑をおかけいたしました。何より若山様にはお時間をかけ作成頂いた資料を投影できず、同時にご講演シナリオも急きょ変更してのご講演となってしまい、心より深くお詫び申し上げます。
そんな中、若山様にはホワイトボードに世界地図を描き解りやすく進めて頂いた事や「紙芝居だ」とユーモアも交え、紙での写真画像のご説明など柔軟なご対応をくださったお人柄に深く感謝申し上げます。