掛軸について
古くから日本人の暮らしに親しんで来た掛軸。日本家屋には床の間つきの和室があり、季節毎の行事や来客によって、家の主が大事にしている掛軸を掛ける習慣があった。
表具の良し悪しは作品鑑賞に大きな影響を及ぼす。表具が変われば作品も変わってみえる。表具は単なる付属品ではなく、作品を引き立てる大事な役割を果たす。それは表具が高ければ良いということではなく、作品を如何に理解し解釈しているかということである。例えば篠田桃紅の掛軸を製作する場合には、華美ではなく、作品に集中できるようにシンプルな表具を心掛けている。
また掛軸には額縁にはない機能性があり、コンパクトに収納が可能であり、巻いて桐箱に収納することにより褪色を防ぐことができる。
床の間は掛軸だけではなく、花も生けられ、日本人の暮らしの知恵が詰まった個人美術館であり小宇宙である。
篠田桃紅による「紅」と書かれた掛軸。太陽コロナに魅せられ、世界中を旅して周ったS様の依頼で、プロミネンス(紅炎)ー太陽の縁から立ち昇る赤い炎のイメージで製作したもの。