映画「ミツバチのささやき」「エル・スール」
早稲田松竹で映画を観てきました。 早稲田松竹は、私の知っている限り少なくとも30年以上外観が基本的に変わっていない“昭和チックに偉大”な映画館です。(客席は改装されています、念のため…) スペイン(バスク地方)のビクトル・エリセ監督(1940~)の「ミツバチのささやき」と「エル・スール」は、いずれも以前に観ていた作品でしたが、2本いっぺんに上映されるということで出かけてきました。(11月13日まで上映中) 監督長編デビュー作の「ミツバチのささやき」は、主人公の少女アナ(6~7歳?)の可愛らしさが特筆モノです。フランケンシュタインの映画を姉と観たあとで、フランケンシュタインは“精霊”と、いたずら好きの姉に教えられたアナは、何とか自分も精霊に会ってみたいと思うようになります。 しかし、精霊に会える場所として姉が教えてくれた、村はずれの廃屋でアナが会ったのは、フランコ内戦の脱走兵でした。そして、アナと脱走兵のほのぼのとした交流は長くは続きませんでした。 監督の第2作である「エル・スール」は、一人娘が少女から思春期に向かう時期の、父娘としての自然な心の「通い合い」と、逆に男性としての父親に娘の理解が及ばない「すれ違い」が、グラナドゥスのピアノ曲や、ラヴェルの弦楽四重奏曲を背景にしつつ、淡々と詩的な映像の中で描かれていきます。 現在はスペイン北部のバスク地方に暮らすこの父親は、事情があって故郷である南の地方(エル・スール)には、帰れないままです。そしてやってくる父娘の別れ。 映画は、娘が父の出身地であるエル・スールに旅立つシーンで終わります。 2本とも逆光のため、人物の表情が見えないままシルエットだけで会話が進むシーンが多用されています。こういう時には、やはり内戦が長くスペインの人々に落としている暗い“影”を考えざるを得ません。 逆に、室内のシーンで、フェルメール(1632~75オランダ)の絵画を思わせる柔らかい光が、色の付いた窓からやさしく入ってくる感じも映像美術として絶品です。 お時間が許せば、是非ご覧になってみてください。また2作品ともレンタルDVD屋さんにも置いてあるところありますので、そちらもどうぞ。]]>