篠田桃紅 リトグラフ
DOWN 篠田桃紅 リトグラフに手彩 DOWN― 下へ 「上善水如」とは老子の有名な言葉ですが、上善は水の如し、柔軟に変化する「水のように生きなさい。」という意味です。 生きとし生けるものすべてに恩恵を与えながら、謙虚であり、自ら人の嫌う低いところへと流れていく。そんな生き方が人としての理想であるということです。 本作品では固さのある構図の中にほとばしる朱色の筆跡がいきいきとした表情を作っています。 An Ode 篠田桃紅 リトグラフに手彩 AN ODE― 頌、賦、叙情詩 桃紅氏の言葉を借りれば、「版をつくるということは、生の個人を、一度伏せる、おさえる、という、蘇生への智慧のかたちが見られる。」 桃紅氏の意志と版画の摂理が織成す化学反応により、偶然と必然が折り重なって出来るのが桃紅氏の版画です。複数枚あっても、一点一点ずつがユニークであるということも、桃紅版画の特筆すべき点です。 研ぎ澄まされた墨や朱色の表現の中にも、どことなくユニークで愛らしい温かさが感じられます。 AN ODE 篠田桃紅 リトグラフに手彩 AN ODE― 頌、賦、叙情詩 「私のリトグラフというのは、石やジンクの上に、水たまりを作っているようなものである。石や金属の版の上のあちこちに水をためて、水の中のインクの動きを見つめていると、子供のころ、水の中に雲や飛ぶ鳥や、風の木の枝葉のゆらぐのを眺めたことを思い出す。」とは桃紅氏の言。 何にもとらわれることのない自由、そしてまっさらな心持ちで世界を感知する境地は、篠田の遊びから生まれた原点ともいえるかもしれません。 初心 篠田桃紅 リトグラフに手彩 現在確立されている篠田の創作スタイルの原点は、形と意味を持つ漢字の本質を表現することにありました。 人や動物の動作、モノの様子を表した図像から生まれた漢字は、記号であると同時に直感的に意味や情景を思い起こさせます。初心に立ち返り、その本質を求めて制作を重ねる中で、次第に桃紅氏の表現は文字という形式を離れてゆき、やがて余計なものをそぎ落としながら深い含みをもった現在の抽象形態の表現へと向かうことになりました。 Ancient Writings 篠田桃紅 リトグラフに手彩 Ancient Writings-古歌 「いろは歌」の一節が書かれていますが、「匂いたつような色の花も散ってしまう。この世で誰が不変でいられよう。」と、仏教的な無常を歌った歌と解釈されてきました。桃紅氏が好んで書く歌で、抽象と具象、書と絵画の中間を浮遊した美しく繊細な作品です。一瞬ごとに更新されてゆく森羅万象の一端を手彩色で表現しています。 Anthology 篠田桃紅 リトグラフに手彩 Anthology― 名曲集、詩選集 「版画は、歳月の歴史を刷り込むことはないが、生の筆を、一たん封じ込めて、よみがえらせるてだてには人のいのりの心を託す場がある。その心が、書く者、刷る者の間に行き交いを生み、そのあいだを右往左往する電流を、私などはいつもたのしいものに感じて、リトグラフを作っている。」と桃紅氏は語ります。 左右に伸びる力強い墨色のストロークと黒の濃淡により形作られる桃紅氏の世界感です。 Arise 篠田桃紅 リトグラフに手彩 Arise― 起こる、生じる、生まれる 「墨色にたすけられるように、想いが充ちてくれば、ある機が訪れてかたちが生まれる気配もある。心のうちに煙のように立ち昇るもの、煙よりも捉えがたく、見がたい、人の心という不可視のもの、しかし不可視であってもかたちを持つものを、可視のかたちにしたい、と希う。」と桃紅氏は語ります。 スピード感溢れる力強い墨の流れと、閃きのような鮮やかな朱色が、天からインスピレーションが舞い降りる突然の一瞬を思わせます。 FRIENDSHIP 篠田桃紅 リトグラフに手彩 FRIENDSHIP— 友愛、友情 漢字で「火」と「水」と書かれているこの作品の意図するところは何でしょうか? 古代中国に端を発する五行思想では、万物は木・火・土・金・水の5種類の元素からなるといわれています。この5種類の元素は、互いに影響を与え合い、その生滅盛衰によって天地万物が変化し、循環するという思想です。 「墨は火で作られ、水で生れ変る、ということ、その両極で存在している、ということに思い当たる。」とは桃紅氏の言。 「火」「水」は一見すると相反する元素ですが、私たち人類も同じようにより良く互いに影響し合えればいいですね。]]>