脇村氏の講演 後記
脇村健子氏は、日本女子大学附属高校や立教女学院高校で30年に亘り講師として壇上に立ち、世界史・現代史(国際政治)・論文指導等にあたられた。現在は、公益財団法人脇村奨学会学芸員・図書館司書。NPO法人シニアSOHO小金井、歴史勉強会「たけのこ塾」小金井、「たけのこ塾」鎌倉を主催されている。
今回の講演は「父の遺したもの 美―自由へのあこがれ」と題し、1988年に逝去された御尊父、脇村禮次郎氏(*1)と美術の関わりについてご講演頂く。講演は、参加者への質問から始まった。
「みなさんは、美術館や博物館、ギャラリーなどへ行きますか?今月行ったという人は手を挙げてください」、もう一つ「みなさんのご自宅に本物のアートは置いてありますか?」と言って、脇村健子氏所有の平岡祥子作品を掲げて見せてくださる。冒頭から実に小気味よいテンポである。皆一同さっそく話に引き込まれることになった。そう、講師として長いキャリアがあるのだから合点がいく。話し方からは聡明で朗らか、そして包容力のある人柄が感じられ、とても心地よい。
講演での印象的な一部をご紹介したい。
「文人画」とは、儒教や教養を備えた文人の絵画であるが、それらの時代背景やどのように日本で広まったか等を丁寧に説明頂く。父・禮次郎氏の遺した「文人画」「抽象画」についても写真と共に紹介頂く。有名画家の傑作ばかりである。
また、父・禮次郎氏について、「欧米ではレディー優先の紳士であったが、家庭内では口数少なく厳格であり、激しく叱られた記憶はあるが会話した事はほとんど無かった。」と話す。しかし、父・禮次郎氏の遺したコレクション展のタイトル「1950年代のニューヨーク・パリ・ロンドン、美術、そして父」や「美は時空を超えて」等は健子氏の考案である。また、ロンドンから届いたという父・禮次郎氏からの絵はがきはとても大切にされている。
冒頭の参加者への質問からも分かるように健子氏にも父譲りの美術に対する思いが育まれていると感じる。生前には不器用だった父娘関係だが、父・禮次郎氏の精神は現在に脈々と受け継がれているのであろう。最後に健子氏からの言葉を紹介する。
『美を愛しむ、美に愛される』身近にアートを!
(*1)脇村禮次郎氏
銀行員として戦前、戦後のニューヨーク・ロンドンなど海外駐在中に多くの美術館を巡る。卓越した鑑識眼と美術への熱い思い、そして文人や画家、美術研究者、画商たちとの交流も多い。和歌山県田辺市立美術館の建築資金に多大な貢献をする。同時に美術品コレクションの寄進・寄託等、郷里である田辺市への功績も大きい。
講演を快くお引き受け頂いた脇村健子氏に心から深く感謝申し上げたい。
2019年8月29日(木)18:00〜19:30 開催
場所:中央区総合スポーツセンター4F第一会議室
第11回サンカイビ文化サロン
「父の遺したもの 美―自由へのあこがれ」
公益財団法人脇村奨励会 学芸員
NPO法人シニアSOHO小金井 理事 脇村健子氏