若さの秘訣1
前々から画家には長生きの人が多い、という気がしてなりませんでした。もちろん、夭逝した天才画家もたくさんいますし、健康その他の事情により壮年期に筆を折った画家も枚挙に遑がなく、統計的に見たら決してそのようなことはないのかもしれませんが…。でも、たとえば20世紀後半に活躍した世界的な巨匠をあげてみますと、シャガール(1887-1985) 98歳、ピカソ(1881-1973)92歳、ミロ(1893-1983) 90歳、マティス(1869-1954) 85歳など、その華々しい活躍が印象的な画家の名が幾らでも浮かんできます。
もちろん、日本の画家だって負けてはいません。小倉遊亀(1895-2000) 105歳を筆頭に、奥村土牛(1889-1990) 101歳、中川一政(1893-1991) 98歳、熊谷守一(1880-1977) 97歳、鏑木清方(1878-1972) 94歳などそれぞれ素晴らしい作品で、いまだに私たちを楽しませてくれています。さらに現存する画家では片岡球子(1905- ) 101歳が大胆な構成と激しい色遣いで私たちに迫ってきます。
サンカイビゆかりの画家としては、篠田桃紅(1913- )93歳をはじめ、ジャンセン(1920- )86歳、ガントナー(1928- )78歳がその代表でしょうか。篠田は皆様にご覧いただきましたように、大胆かつ簡潔な画面構成と簡素でしかも繊細な味わいの色遣いとで、宇宙の神秘、あるいは宇宙のエネルギーを表現しています(ように私には思えるのですが、篠田自身は作品に関しては一切語らず「あなたがご覧になったままに…、お感じになったままに…」と言われるのみである)。篠田にとっては「抽象」と「文字」の区別すらないように思われます。ジャンセンは体調を崩されて以来、めっきり作品の数は少なくなってしまいましたが、今なおご自分の思うがままに絵筆をとっておられるようです。さすがに、往年の思索に富んだ切れ味鋭い線は見られなくなりましたが、力の抜けた表現は円熟味を加え今までと一味違ったジャンセンを見せてくれています。ガントナーは、昨年最愛の奥様を亡くされましたが今はそのショックからも立ち直り、以前にもまして緻密で色彩にとんだ作品の制作に励んでいますことは、この4月から5月にかけてサンカイビで開催しました「春夏秋冬展」でご覧いただいたとおりです。