「空」 書×篠田桃紅
この世の多くの事象は中国の陰陽思想に則っています。陰陽とは、森羅万象、宇宙のありとあらゆる事象を陰と陽の2っのカテゴリに分類する思想です。陰と陽とは互いに対立する属性を持った2つが互いに補完し合っているということ。わかりやすいところで、光と闇や無私と私欲など、お互いの存在がなければ対立する存在も判らず、お互いが紙一重で存在するという示唆でもあります。 ひとつわかりやすいところで例を挙げると、愛と憎悪ですが、その間にあるのはとても薄い壁です。もちろん憎悪よりも愛で人の心を埋め尽くすことが出来ればそれは素晴らしいことであり、人生が薔薇色になるでしょう。しかし日本にも『可愛さ余って憎さ百倍』という諺があるくらい、愛するがゆえに、場合によってはそれが憎悪に変換してしまうということです。 しかし、人はその事象をしっかり吸収した後、それを超越することが出来れば、新たなる境地に達することが出来るといいます。仏教でいう『空』という考えですが、固定的な実体或いは『我』のない、陰と陽の二つの極端から離れたあり方です。]]>