切符切り
私の仕事の原点はポルトガルの港町、ポルトの切符切りのおじいちゃんです。フランスに住んでいたとき、母とこの町に旅行で立寄りました。ポルトはリスボンに次ぐ、ポルトガル第2の都市で、その創設は5世紀より以前にさかのぼります。ローマ帝国時代から港町だったこともあり、「港」を意味する「ポルト」と名付けられ、国名のポルトガルもこの地名に因んだとされています。
海岸線を走るチンチン電車の切符切りのこのおじいちゃんは、陽に焼けた深い皺をもっと皺くちゃにさせながら、明るい笑顔で一人一人に「こんにちは。元気かい?」と挨拶しながら、切符を切って回っていました。その笑顔を向けられただけで、今日一日がいい日であったかのような、そんな幸せな気分にさせられました。そのとき、「仕事の内容に優劣なんてないんだなぁ。その人がその仕事を如何に捕らえるかが大切なんだ。そして自分がその仕事にプライドを持ち、そしてエンジョイして、その幸せな気持ちを周りの人々と如何に共有するかが大切なんだ。」と悟りました。
たまたまこのおじいちゃんと対局にある切符切りの詩をフランスの語学学校で習っていたので、特に印象深かったのかもしれません。
フランスの俳優でもある、ゲンズブールが歌っていた歌詞です。
以下紹介します。
J’suis l’poinçonneur des Lilas
ぼくはリラ駅の切符切り
Le gars qu’on croise et qu’on n’regarde pas
人はぼくとすれちがっても気にしやしない
Y’a pas d’soleil sous la terre
地下には陽光も届かない
Drôle de croisière
行き交う人たちを笑い
Pour tuer l’ennnui j’ai dans ma veste Les extraits du Reader Digest
ぼくは退屈凌ぎにジャケットの中にリーダーズ・ダイジェスト誌をしのばせる
Et dans c’bouquin y a écrit Que des gars s’la coulent douce à Miami
この雑誌の中に優雅な生活をおくっている人たちを紹介している
Pendant c’temps que je fais l’zouave Au fond d’la cave
他方でぼくは、穴蔵の中でくだらない仕事をしている
Paraît qu’y a pas d’sot métier Moi j’fais des trous dans des billets
職業に貴賎はないとは言うものの、ぼくは切符に穴をあけるだけ
J’fais des trous, des p’tits trous, encor des p’tits trous
ぼくは穴をあける。小さな穴を。また小さな穴を。
Des p’tits trous, des p’tits trous, toujours des p’tits trous
小さな穴。小さな穴。いつもいつも小さな穴を。
Des trous d’seconde classe Des trous d’première classe
二等車の小さな穴。一等車の小さな穴。
J’fais des trous, des p’tits trous, encor des p’tits trous. Des p’tits trous, des p’tits trous, toujours des p’tits trous…
ぼくは穴をあける。小さな穴。また小さな穴。小さな穴。小さな穴。いつもいつも小さな穴を。
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