時田良太朗 展  

会期:
2004年 11月1日(月)11月20日(土) 作家詳細
12:00−18:30 日曜 休廊 作品紹介
備考: 作家来廊 毎日pm1:00−6:30 前ページへ
会場: アートスペース・サンカイビ   →地図 Homeへ
生-0405 和紙にアクリル  89×66cm 生-0402 和紙にアクリル  89×66cm



私の瞑想と制作

                                  時田良太朗

 ここアパラチア山脈のふもとに独居するようになって、はや14年が過ぎた。ニューヨークのアーチストのメッカ、ソーホーが観光地化されすぎて心が落ちつかず、自分の制作生活に適した地を求めて、移り住んだのである。

 毎日自然の中で生活し、制作しているうちに、静寂・沈黙の装いをみせている自然に、心はゆり動かされ、私の心の眼は、心の耳は自然・宇宙の生命の世界へとむいていった。その神秘に満ちた世界へ少しでも到達するためには、雑念妄想をはらい、心を研ぎすますことが大切だと思い、早朝の瞑想の行を数年前から本格的に始めることにしたのである。毎朝、瞑想の行をすることによって、純一無雑の世界に自分を近づけていかねばならない。また、そこは自己と自然と宇宙が一体化された境地のようにも感じる。そして私の感覚は研ぎすまされ、澄みきった心で制作へむかうことができるのである。私にとって瞑想の行から一日の制作活動が始まると言ってもよかろうか。

 制作は寡作だが、直感によって感得した心にうつる生命の世界を、簡潔な構成と凝縮した色彩で表現しようとしているが、どうだろうか。言葉で言うのは易しだが、表現となると感覚を研ぎすまし、心に去来する雑念妄想をはらいのけ、精神の集中とひたむきな制作に没入しなくてはならない。そのため常に健全な心身を保ち、たゆまない精進の日々であるように心がけている。





東洋の叡智、仏教の「二河白道」を彷彿させる

━ 生きる元気への目覚め ━

桑門 豪 (九州大谷短期大学名誉学長・善教寺住職)

 絵画鑑賞は、其れをみる者が絵を通して其の人なりに何かを感じて楽しむことが出来れば其れで良いのではないかと私なりに決め込んで絵を楽しんでいる。
 「二河白道」 は、ご存知の方も多いと思うが、中国の浄土系仏教の高僧、善導大師が人の生き様を譬喩した有名な譬えである。其れは、極、簡単に記せば次の通りである。
 「人生の苦悩からの解脱を求めて生きる人(一切の往生人)に申しましょう。人の生き様は、人生の曠野を一人旅する往生人の様なもので、東西両岸を挟んで南北に広がるニ河の中に、『真実一路の旅なれど真実鈴振り思い出す』と、その幅四五寸の白道をとぼとぼと歩む、真実を求めて止まない旅人に喩えることが出来ましょう。」
 「苦悩多き娑婆を東岸に、苦悩からの解脱、転迷開悟した往生人の悟りの世界を西岸に譬え、西岸より旅人は、『汝、一心正念にして直ちに来たれ、我良く汝を護らん。すべて水火の難に堕せんことを畏れざれ』 との呼び声を聞きながら、其の間に広がる苦悩多き人生を、南北に広がる『火の河(瞋恚、怒り)』 、『水の河(貪欲、自己の欲望への限りなき喘ぎ)』 の煩悩の渦巻く果てしなき荒野に譬え、『二河闊さ百歩、おのおの深くして底なし、南北辺なし。正しく水火の中間に、一つの百道あり、闊さ四五寸なるべし・・・。』 との白道を人生の苦悩に怯むことなく真実を求めてとぼとぼと歩む旅人に譬えています。」
 其処に、西の岸より人の呼ぶ声を聴くと云うのは、水火の煩悩や、群賊悪獣に惑わされる事無く、苦悩多き人生にあっても、猶、真実を求めて生き切りたいと云う真実を求めて止まぬ人間の内なる促しの叫びを聴くのでありましょう。
 彼の絵を見ていると、中央に細く、しかし、力強く貫いた白線が、此の 「二河白道」 の譬喩の 「白道」、真実を求めて止まぬ苦悩多き人生を 「生き切る力」 を彷彿とさせてくれ、何となく生きる元気が沸いてくるのである。


アートスペース・サンカイビ    
代表: 平田 美智子